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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「とりあえず、口喧嘩の遺恨は残らなそうで良かったです」
風に煽られる髪を必死で押さえながら、三木ヱ門は競うように団扇を動かす五年生たちを見た。
雷蔵と兵助は根が善人寄り(単純に「優しい良い人」ではないと今の三木ヱ門は知ってしまった)だからあの程度の放言で済んでいるのだろうが、「腹に一物」型の人間に喜八郎作のぬるぬるを浴びせたら、丑三つ時の怪談話よりゾッとする体験ができそうだ。
それこそ"鼻薬"を隠している伊作なら何を喋るのか非常に興味はある。
「暑がってるなら、薬が効いてきたかな。――扇ぐのはちょっとやめて、失礼するよ」
すり鉢を置いて近付いて来た伊作が屈み込み、まず兵助の顔を捕まえて、右目の上下のまぶたを押し広げた。爪を立てる気かと一瞬驚くような至近距離で瞳に指先を突き付け、その指を遠ざけたり近付けたり左右へ動かしたりしながら、黒目の動きを観察している。
「ふーん」
小さく唸り、くりんと兵助の顔を捻って、外の光が差す戸口の方へ向けさせる。
「眩しい? 普通?」
「普通に明るいです」
夕方の日差しが映っている障子紙はほんのり明るいが、目を細めるほど眩しくはない。顔を掴まれていることに特に異議を唱えず兵助が答え、伊作は頷いた。
「目はもう大丈夫だな。――薬湯の準備はできた? じゃあ外のみんなに配って、使った後のお椀は医務室に入れないで、廊下の端へ重ねておくようにね」
「はい」
用意を整えて待機していた下級生たちに指示を出し、数馬が返事をすると、伊作はもう一度頷いて今度は雷蔵を手招きした。
しかし反応がない。
雷蔵は兵助たちから目を離し、開いた引き戸の向こうにわらわらと集まって来た風邪っぴきたちを見ていた。

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