問い質されながら、兵助は三木ヱ門をじっと見詰めている。
気後れした様子はないが、かと言って反抗的な態度で睨みつけているのでもない。日向ぼっこ中の亀とか巣の底に潜んだアリジゴクとか、そういうものを観察しているような目だ。
そして口を開かない。
今さら黙秘されてもな――と三木ヱ門が次の手を考えていると、一瞬すうっと横に流れた兵助の黒目が、もう一度正面で止まった。
「潮江先輩はどうして髪型が変わってるんだ?」
「……へ?」
「あ?」
「あ、本当だ」
兵助の唐突な質問に三木ヱ門は間の抜けた声を上げ、なぜ自分の名前が出て来るのだと文次郎は不審そうに首を巡らし、寸前まで叱られた子犬のようになっていた雷蔵は無心に驚いている。
「焔硝蔵でお見かけした時は引っ詰め髪でしたよね」
二の句が継げずに固まった三木ヱ門からは答えが聞けないと思ったのか、兵助はちょっと首を伸ばして、遠くの文次郎に直接尋ねた。
さっきの左吉と文次郎のように、今度は左近と伊作が呆れと好奇心の表情をそれぞれに浮かべる。後頭部でざっと結わえた髪の束をちょいと摘んで、文次郎はじろりと兵助を見た。
「これがどうかしたのか」
「どうもしませんけれども」
混ぜ返すでもなくしゃあしゃあと兵助が言い、文次郎は怒るより先に呆気にとられた様子で「はあ?」と声を高くした。
「じゃあ、なんで聞いた」
「何となく気になったので。頭巾をつけていらっしゃらないのも珍しいので。首に飾り結びを巻いていらしたのも不思議だったので」
「……元結がほどけて適当に結び直しただけで、頭巾はさっき駄目になって、その頭巾を使った飾り結びは田村の作だ」
「へー」
のでのでと連発した割に、兵助はいちいち答える文次郎に無関心そうな相槌を打った。