三木ヱ門の立ち上がりざまの足刀を叩きこまれた五尺ちょっとの重い衝立は、まるで突風を浴びたような唐突さで、辺りを揺るがせてずずんと床に倒れた。
睨み合う鼻先を割って横蹴りを放たれた雷蔵と兵助がぽかんとする。
衝立の向こうでお椀に薬湯を注ぎ分けていた保健委員たちも唖然として注目している。が、予備のお椀をから拭きしていた左吉はやれやれと言いたげに肩をすくめ、お盆を持って片膝立ちになっていた文次郎は面白がるような表情をした。
「失礼致しました」
ゆっくり足を下ろし、膝を折ってきっちりと座り直して、三木ヱ門は二人の五年生とその他の面々に丁寧に頭を下げた。
「ですが、先輩方の喧嘩を見せつけられるのは、下級生として悲しいです」
「……あー」
「……だよね」
三木ヱ門が真摯な顔を向けると、口々に唸って雷蔵はちらりと兵助に目をやり、兵助は顎を引いて上目遣いに雷蔵を見た。
そこから離れた所では伊作が文次郎に横目をして睨み返されている。
しかし伊作は五年生たちの刺々しいやり取りが聞こえていたらしく、三木ヱ門が医務室の備品を蹴ったことは咎めようとしない。紛糾した予算会議で火器をぶっ放すくらいだから、揉め事を止めるために多少荒っぽい手段をとるくらい予想の内、と思っているのかいないのか。
……あとで謝っておかなくちゃ。
「言い争いの内容については伺いません。――久々知先輩」
「はい」
改まって名前を呼ばれた兵助が、背中を伸ばして正座した。
「図書委員会が紙を売るという話は、ご存知ではありませんでしたか」
「知りませんでした」
「……鳥の子玉」
ぴくっと兵助の肩が揺れる。
「は、新しい買い入れ先から購入した火薬で作ったのですか」