その上、委員長に不誠実な献策をしようとしていたのだから、穴が開いた予算を独力で埋めるくらいのことをしなくちゃ立つ瀬がない。
ただ五年生だというだけで役にも立たない、木偶の坊になってしまうのは嫌だ。
片手で乱暴に目の辺りをこすって雷蔵はぼそぼそとそんなことを呟く。
その様子を眺めつつ、知らず知らずのうちにきちんと座って話を聞いていた三木ヱ門は、内心で「うーん」と唸った。
架橋工事に行った先で村人と揉めた留三郎の助力になろうとしたのに、悪意なく一年坊主と同じ扱いをされて落ち込みきっていた作兵衛と、今の雷蔵がどことなくかぶる。……ちょっと行き過ぎじゃないかと思うくらい雷蔵の独白に共感を覚えている自分も、おそらく。
委員長の助けになりたいと思いながら、足りないことばかりで詰めが甘くて役に立てず、忸怩たる思いをいつも抱えている二番手の憂鬱。作兵衛も雷蔵も、自分も――たぶん、そんなものを感じているのだろうな、と考えた。
……共感できるだけに、実行できなかったとはいえ裏予算案を画策していたことについて、不破先輩を糾弾するのは非常にやりづらくなったな。
「図書委員会はそんなことになってたのか」
妙にのほほんと兵助が言い、三木ヱ門は我に返った。
漉き返し紙のほうは他人事だが、目の前で裏予算案の話が出ているというのに、兵助に慌てている様子はない。不安定にゆらゆら揺れる瞳を雷蔵に向けて、首を傾げる。
「言ってなかったんだ、中在家先輩に」
「……言えるわけ無い」
「計画を立てた時は"乗る"と言ったのにか。危険だけど、俺と三郎は、やったんだぞ」
「火薬も学級委員長も上がいないじゃないか。独断専行できるお前たちと同じようにはいかない」
「そんなの最初から分かってた事だろう。分かっていて中在家先輩を説得するものだと思ってたよ。危ない橋を渡るのが嫌なら、初めから参加しなければ良かったんだ」
「私が臆病者だと言いたいのか?」