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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「これを不破先輩に渡すようにと、北石先生からお預かりしました」
「私が、何?」
「きたいし……」
自分を指さした雷蔵がニコニコと笑い、記憶の引き出しが開かなかったらしい兵助は「末法の到来を食い止める方法を示せ」とでも言われたかのような深刻な表情になって首をひねる。
三木ヱ門はふと、自分が手にしている書状に雷蔵が目を向けていることに気が付いた。
試しに軽く左右へ振ってみると雷蔵の瞳もそれを追って動く。全く目が見えていないのではなく、焦点を合わせづらいようで、三木ヱ門の手元を視線がさまよっている。
「不破先輩、私が何者かお分かりになりますか」
試しに尋ねてみると、ふらふらと揺れていた雷蔵は不意にぐっと身を乗り出して詰め寄り、手を上げて三木ヱ門の頭をぐしゃぐしゃ撫で回した。
「分かるよー。田村だよー」
「はい、そうで……」
「会計委員で、四年生で、火器マニアで、厳しくて、意地っ張りで、できる子だよ―。今日はよく泣いてる、今は泣いてないね、潮江先輩にいじめられてない?」
「……られてません」
やりづらい。
本心を韜晦した狸モードで来られるのもやりづらいが、触れた場所みなツルツル滑って途方に暮れるほど掴み所が無いのは、さらに輪をかけてやりづらい。……下手な洒落を言うつもりはないんだけど、何このふわっふわ振り。
「俺がなんだって?」
衝立の向こうから訝しそうな文次郎の声がした。
「潮江せんぱーい。田村に意地悪して泣かせては駄目ですよぉ」
三木ヱ門が言い訳をするより早く、雷蔵は実に朗らかに言い放った。
文次郎が沈黙した。くすん、と小さく吹き出したのは左吉だろうか。
「その話はいいですから! これ受け取って下さい! 大事なものですから! ね!!」
文次郎の心中を想像しないようにしながら、三木ヱ門は雷蔵の手を掴むとその中へぐいぐいと書状を押し付けた。
「お使いありがとー。えらいえらい」
かいぐりかいぐり、と唱えながら雷蔵がまた頭を撫でてくる。
ひょっとして、「強硬手段で止められるまで同じ仕草をし続ける」なんて作用の神経毒があるんだろうか。喜八郎は本当に一体何の材料であのぬるぬるを作ったんだ?
「これ、体験調査の質問表なんだー」
たとえフリでも雷蔵に殴りかかるのは気が引ける、と三木ヱ門が撫でられながら悩んでいると、書状をもてあそびながら雷蔵がさらりと言った。

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