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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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まさか釘や螺子を飛び散らかしてカタカタいっているわけではあるまいし、話せるかどうか危ういというのは、随分な重症のように聞こえる。
「込み入った話は無理です。でも会話はできます」
「ん?」
どこからか聞こえた左近の声に三木ヱ門がきょろきょろすると、雷蔵たちがいるという衝立の陰から左近が立ち上がった。伏木蔵と同じようにお盆を手にしているが、こちらには顔ほどもある大振りのお椀がふたつ重ねて乗せられている。
「レポートは書けたか」
皆のいる方へ戻ってきた左近は、三木ヱ門にそう尋ねられてちょっと口を尖らせた。
「どうにかそれらしい値が出せたので、形にはなりました……おかげさまで」
棒読みでもそもそと礼らしいものを言ってぷんと横を向く。計算間違いを正して貰ったことがありがたいのは確かで、感謝しなければと分かってはいるものの、独力でできなかったのがどうしても悔しいらしい。
まあ、その意気や良し、だ。
「用が済んだら一度見せろ。約束だ、添削してやる」
「ヨロシクオネガイシマス」
つんけんする左近と苦笑いする三木ヱ門を不思議そうに見比べていた数馬は、横合いから「大した盛況だな」と文次郎に話し掛けられて、びくっと肩をすくませた。
「そんなにびくびくしなくてもいいじゃねえか」
「いえ、すいません、びっくりして」
「知らない間に文次郎が真横にいたら怖いよねえ」
数馬が薬草を掬い終わった鍋にすり鉢の中身をひと匙放り込み、伊作が平板な口調で言う。湯気に混じってふわりと沸き立ったにおいに顔をしかめた文次郎は、その発言は聞き過ごして、鍋を指差した。
「これを注ぎ分けて外のやつらに配れば、当座の仕事は終わりか」
「――そうだよ」
「手伝おう。何をしたらいい」
文次郎の申し出に伊作が顔をゆがめる。それを意に介さず、文次郎は隅の衝立に目を向けると、三木ヱ門に向かって「不破に預かり物を渡してやれ」と言った。
「ついでに横っ面でもひっぱたいてみろ。正気づくかもしれん」
「出来ませんよ、そんなこと……」
乱暴な提案をする文次郎に軽く言い返し、なんとなく抜き足差し足で衝立に近付いて、三木ヱ門はそおっと裏側を覗いた。

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