「拾い物で、何に使うのか分からない物です」
「なんだそりゃ。何でそれを用具が持っていて、お前に返すんだ」
「鹿子の中に落ちていたのを作兵衛に見せるはずだったので、預かって頂いていました。それは結局左門が解決したので不要になって、それでお返し下さったんだと思います」
「なるほど。分からん」
事実を並べて簡潔な説明をする三木ヱ門に、文次郎は真顔で言って頷いた。
その事実に付随するあれこれを全て述べ立てたら、語り終わる頃には真夜中になってしまう。面倒は省こうと、三木ヱ門は目で包みを指した。
「先輩も見て頂けますか」
「開けていいのか。――あっちには見せねえほうが良さそうだ」
「田村、それ、俺も見ていい?」
文次郎が小猿と一年生たちに背中を向けると、三木ヱ門の後ろから這い出した八左ヱ門もそれに並び、壁を作りつつ尋ねた。
「どうぞ。と言うか、お願いします。持ち主が分からなくて往生してるんです。たぶんこれと対になるんだと思うんですが」
手甲の下から金無垢の金具を取り出し、手のひらに載せて掲げて見せると、八左ヱ門の目が丸くなった。
「それ――」
「うわ、すげえなこれ。真珠と玉と、漆に螺鈿……、組紐は絹糸か」
手拭いの中にちんまり収まっていた飾りを指先で摘み上げようとして、思い直したようにその手を引っ込め、ためつすがめつ観察して文次郎が嘆息する。派手な柄の中に紛れそうに小さなそれを覗き込んで、八左ヱ門はもう一段階、目を大きくした。
「タカ丸さんが言うには、若い女性向けの意匠だそうなんですが……生徒の持ち物にしては高価過ぎる、とも。先輩方は、見覚えはありますか」
「俺はない。綺麗だが、確かに使い道が分からねえな」
三木ヱ門の問い掛けに、文次郎は即座に首を振る。
しかし八左ヱ門は喉を押さえて息が止まったような顔をした。そして、何事かと涙で霞む目を向けた三木ヱ門に、囁くような声で尋ねた。
「……なんで、ここにあるんだ?」