「そこで何を?」
状況を一目見るや、思い切り険悪な表情と声で三木ヱ門が言った。
きりきりと音を立てそうに吊り上がった目と目が合い、反射的にへらりと愛想笑いを浮かべたが、三木ヱ門は釣り込まれて笑ってはくれない。それどころか、何を笑っているのかと言わんばかりに眉まで逆立てる。
「あのー、えーと、そのー」
それでも問答無用で怒鳴りつけないということはこちらの言い分を聞いてくれるつもりがあるのだと前向きに解釈して、自由な右手を意味もなくばたばたと振りつつ弁解を試みる。
左手はと言えば、指先から肩口まですっぽりと三木ヱ門愛蔵の移動式石火矢――名前は何といったか――の砲身にはまり込んでいる。
明るい陽が降る真昼の校庭だというのに、額と言わず背筋と言わず、冷たい汗がだらだらと流れ落ちる。
じいっと無言で睨み据える三木ヱ門の視線の圧力に、口にしかけた言い訳も尻すぼみに消えてしまう。
……どうしよう。
「お、何やってんだ? ……何、この状況?」
からっと晴れた声がして、救われた思いで顔を上げる。
また脱走した生物の捕獲に走り回っている途中なのか、虫捕り網を担いだ八左ヱ門が目を丸くして立っていた。