「さっき、意味がないと言ったな。真意を問い質しはしない。だが、お前がひとりで全部抱え込むのは越権行為だ。それは許さん」
「……だって、」
「だあああっても蜂の頭もあるか!」
まだ呼吸がおぼつかない三木ヱ門がようやくのことでたどたどしく抗弁しようとすると、文次郎は不意にくわっと目を剥いた。強いて低く抑えていた語調を振り捨て、いつもの調子で一息にまくし立てる。
「お前のことだから、喋らないと言い張るのも何か考えがあっての事だろうさ。だけどなぁ、色々と蚊帳の外に置かれてるのは甘受するが、何も知らねえからと言ってお前がそんな面をしてるのを平気で見ていられる訳がねえだろうが。口は割らないわ事情は分からねぇわで苛々するくらいなら、いっそ丸ごと抱えてやらぁ!」
「ツラ……」
三木ヱ門は思わず自分の頬を両手でぺたりと押さえた。
精々きりっとした表情を作っていたつもりだった。が、一体どんな顔をしていたのだろう。
累が及ぶのを避けたくて文次郎には小猿の件は伝えないと決めた。
厄介に巻き込まれたという思いは勿論強いが、自分が盾になって委員長を守るのだという覚悟をどこか誇らしく感じる気持ちもどこかにあり、それは言い換えれば「自分だって役に立つのだ」と思いたい意地でもある。
しかしその意地もろとも委員長は背負うと言う。
詳しいことは何ひとつ知らないのに、そんなの知ったことかと、肩にのしかかっていた重荷を無造作にもぎ取ってしまった。「そんな面」を見ていられないから、と。
そして肩は、確かに軽くなった。
頬を押した両手に伝わる感触が変わったのを感じたその時、突然、ぱらぱらと生温いものが指先に降りかかった。