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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「……ああ?」
前触れなしに鼻先を叩かれたような純粋な驚愕が文次郎の顔に浮かんだ。
次の瞬間にも拳が飛んでくるかと三木ヱ門は内心で身構えたが、驚きが怒りを余程大きく超えたらしい。まじまじと三木ヱ門を見詰めるばかりの文次郎は睫毛の一本も動かさない。
すうっと息を吸い、努力して背筋を伸ばして、三木ヱ門は続けた。
「生物委員会が収支報告書に不審な記述をしてきた理由を、聞きました。それを聞いた上で私は、生物委員会の報告書に不正事項はなかった、と申し上げます」
背後で八左ヱ門が身じろいだ。その気配を感じつつ、三木ヱ門はぐっと顎を引いて文次郎を見詰め返した。
生物委員会の予算のほとんどをひとりで食い尽くした預かり物の小猿の、殿上人の間をたらい回しにされてきたという出自を知ったら、不測の事態が起きたとき見知らぬ誰かの体面の為に首を刎ねられることになる。
知らなければ、ただ「そう言えば変な猿がいたな」と思うだけで済む。
文次郎にそれを話すかと、水練池で八左ヱ門は言った。
話したければ話すといい。万一の場合に会計委員長の首を飛ばしてもいいならば、どうぞ喋れ、と。
「共犯だと言っておいて、その報告で俺が納得すると思うのか」
薄く口を開いた文次郎が掠れた声で言う。やっと一度だけ瞬きした目に、遅れ馳せの怒気が揺らめく。
「竹谷先輩は既に、会計委員に全てを話しています。だからもう言うことはありません。会計委員長に真実が伝わらない責任は、知っていて喋らない私にあります」
でも、私は喋りません。
殴られても蹴られても、嫌われても軽蔑されても、喋りません。

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