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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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一年生が下り孫兵が下り、長ものの虫捕り網が邪魔をしてじたばたする八左ヱ門とその下で身動きしかねている三木ヱ門を振り落として、蝶の標本さながらに地面にへばりついていた文次郎がずるずる起き上がる。
「あー……、ワタ吹くかと思った」
みぞおちを撫でながらぼそりとこぼし、埃だらけの顔を小さく歪めた。
虎若と三治郎、孫次郎は小猿を抱えた一平に駆け寄ってわいわいと取り囲み、孫兵は幹を伝って降りて来たきみこの回収に走っている。そちらをひと回り眺めてから、文次郎は緊張の面持ちでかしこまる八左エ門をじろりと睨み、「これはどういう状況だ?」と口調を強くした。
「珍しい猿が逃げたってのは知っているが、一体この馬鹿騒ぎは、」
「そんなことより先輩!」
文次郎が言い終わるより先に大きな声を上げたのは、説明しあぐねて言葉に詰まった八左ヱ門ではなく、ぐしゃぐしゃに髪を乱した三木ヱ門だった。虚を突かれて一瞬動きが止まった文次郎に飛びつき膝立ちになって、しゃにむにうなじを覗き込もうとする。
「おい、何だよ!?」
慌てて後ろに手をつき倒れるのを堪えた文次郎が頭を回そうとすると、三木ヱ門はそれを両手で抑え付けて、首を折らんばかりの勢いで前へ引き倒した。
「きず、傷は!? 噛まれた跡はどこです!?」
「痛てぇ! 落ち着け田村、離せ、」
「だって早く手当しないと、破傷風にでもなったら、僕は!」
「大丈夫だっての! 噛まれてねえ、から」
「……え? あれ?」
そう言われて、三木ヱ門はやや冷静になってうなじの辺りを検分する。
俯いた頭の後ろで、無造作に括り上げた髪がぴょこぴょこと揺れている。さっぱりと晒した首周りは、目を近付けて丹念に見ても、確かに血の滲むような新しい傷はない。
「……あ」
すずめがいない。

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