やがて前方に木立の切れ目が見えて来る。
怯む前に一気に駆け抜けた。同時に、右手の方から生物委員会がわっと現れる。
「あれっ、田村先輩?」
ちらりと横を見た孫兵が驚いたような声を上げる。それに釣られて振り返った八左ヱ門は、三木ヱ門と目が合うと、呆れたように苦笑いをした。
「縁があるな」
「嬉しくないです」
「だろうね」
「猿ですか?」
「猿だよ」
肩に担いだ虫捕り網をひょいと持ち上げ、八左ヱ門は倉庫の屋根を指して、朗々とした声を張り上げる。
「目標、屋根の上!」
「はーいっ」
声を揃えて返事をした下級生の一団が2つに分かれ、倉庫の左右から回り込んで行く。三木ヱ門が顔を上げると、それほど高くない屋根の天辺を飛ぶように跳ねて移動する小さいものが見えた。
見えたと思った途端、影も残さず消えている。
「速い!」
「だから厄介なんだよなぁ」
呟いた八左ヱ門が走る勢いのまま跳躍した。壁を蹴って倉庫の屋根へ乗り、助走をつけて別の一棟へ飛び移る。
「……猿だ」
三木ヱ門が思わず口走ると、並走していた孫兵が急に斜行してドンと肩をぶつけた。