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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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とっさにあたりを見回すが、すばしっこい小さな影は見当たらない。
あっちだ! の声と共に林の向こう側で集団で駆け出す足音がして、木々の間に青や緑や井桁模様がちらちらしたかと思うと、あっという間に遠ざかり見えなくなった。
「あっちって……倉庫のある方だ」
そしてそこでは文次郎が苛々している。そんな所に八左ヱ門が駆け込んで来たら、文次郎が水練池から立ち去った時の態度からして、またひと揉めする恐れがある。しかし、小猿の捕獲に必死になっている八左ヱ門はおそらく、取り合わず受け流すか強行突破するだろう。
苛立ちを加速させた文次郎の前にのこのこと顔を出す勇気はない。
「ないから逃げる、って理屈にはならないんだよなあ、田村三木ヱ門としては!」
自棄気味に叫んで頬を両手でパンと叩き、走り出した。
その拍子に手甲の隙間から滑り落ちそうになった金の金具をすくい上げ、手の中へ握り込んで、これの持ち主も見つけないとと頭の隅で考える。
玉の飾りと一緒に事務室へ持って行って、吉野先生に――くれぐれも「吉野先生に」――保管をお願いして、掲示板に張り紙でもしておくのがいいだろう。いいものらしいからネコババしてやろうなんて不心得者はこの学園にはいない。
そんな奴がいたら、うちの委員長に地の果てまで追いかけられたうえ丸一日は正座で説教だ。
文次郎を怒らせるとそれくらい怖い。
そして、その文次郎のもとへこれから行くのだ。
「……左吉、お前の役目は重いぞ」
駆け足が少し鈍ったのを思わず声に出た呟きのせいにして、気を取り直し再び前を向く。

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