いらない紙を集めて、漉き返し紙を作って、売る。
だから事務室に大量の反古紙があると聞いて喜んだ。絶対に部外者の目に触れてはならない書類の書き損じでもなければ、あとは捨てるだけのような紙は、学園内には案外少ないからだ。
誰も損をしないし誰の迷惑にもならない、いい考えだ。
が。
「漉き返し紙を売って儲けた額の、申告があった覚えがない……な」
「あ」
きり丸が思わずのように久作の顔を見るが、久作は思い切りしかめっ面をした。
申告漏れ疑いを口にした会計委員の四年生にもその顔を向ける。
「今のところ利益と言えるほどの利益になってないんです。手間賃があると仮定したら、差し引きでぎりぎり黒字になるくらい」
それでも会計委員会に知らせておかないといけませんかと、やや挑戦的な口調で言う。
学園から支給される予算の何割かに相当するほどの利益が上がっていれば、資金力があるとみなされて、その分予算を減らされる。しかしまだそこまでの段階ではないし、今後安定した収入源になるとは確定していない。
その辺りを心配しているのだろうと察しはついたが、三木ヱ門はちょっと言葉に困った。
派手に儲けたのでもない限りは構わない――とは、会計委員の口からは言い辛い。しかし、こんなことをやってますと聞いてしまったからには、見ざる聞かざるで目こぼしする訳にはいかない。
こういう駆け引きは委員長の得手だ。自分にはまだ、荷が重い。