「……一体、どうやって儲けるんだ?」
「それはですねー。僕の人脈が物を言います」
無意識に疑問を口にしたことに気付かなかった三木ヱ門は、急にきり丸が得々と説明を始めたので、思わずきょとんとした。
それを話しちゃうのか?
久作は、と見れば、少し渋い顔できり丸を斜に眺めているが止める様子はない。それどころか、三木ヱ門の訝しげな視線に何を思ったのか、ぐいと顎を反らして校舎のある方へ向けた。
「きり丸は偉そうなこと言ってるけど、ホントは雷蔵先輩の大雑把が炸裂したのがきっかけなんですよ」
「大雑把の結果、紙が溶けることになったのか?」
「溶けたと言うか、溶かしたと言うか……。本の破れを接ぐのに使う糊を、大きい傷も小さい傷もみんな同じ太さの筆でぺたぺたやったから、紙が糊の水分に負けてかえって穴を広げちゃったのがあって、」
「そうなっちゃうと貼り合わせられないから別の紙で埋めるんです」
話を横取りされたきり丸が負けじと割って入る。
補修するべき本の傷みを悪化させた雷蔵は、委員長に叱られつつ破れてしまった本と同じ質感の紙を大わらわで探した見つからず、物置小屋から調達した古紙で漉き返し紙を作って間に合わせたのだと言う。それはまだ雀躍集のせいで予算を使い切られるより前、夏頃の話で、その後は何ということもなく忘れられていた。
「――それを今回の予算危機に面して思い出したのが僕です!」
「漉き返し紙を作ること自体は、図書委員会ではよくやってるんですけどね。それを売ることまでは確かに考えつかなかった」
胸を張るきり丸に冷や水をかけるようなことを言いながら、久作はさらっと重要な発言をした。