残念そうに久作が言い、その横できり丸がうんうんと頷く。
あの大暴走は自伝を置き去りにして逃げた突庵に追いつくためだけではなく、辛抱の切れたきり丸はじめ図書委員が「もうこれ溶かしちゃおう」と腕まくりする前に、大急ぎで手元から離したかったから、か。
「儲け話を前にして良識が吹っ飛ぶって、お前……きり丸に毒されてるなあ」
「……若干自覚してます、よ」
「毒とは失礼な。使いみちのないものは工夫して使えるものにする! これ、」
「ドケチエ?」
先回りした三木ヱ門に首を振り、きり丸は威張り顔でにんまりした。
「生活の知恵です」
「主婦か」
あまり捻りのない突っ込みをしつつ、内心で首をひねる。
使い回しの利かない反古紙を溶かして使えるものにする――とは言っても、では溶けた紙で何からできるのかと考えると、「紙」しか思い付かない。いわゆる漉き返し紙、再生紙の類だが、元々書かれていた文字や絵の墨の色が混ざるから真白にならず、価値もそれほど高くならない。
だとしたら、そこは薄利多売で補うのか? 元手がかからないのと、作業をする図書委員の人件費は無視できるから、案外利益になるのか?