こちらが穿って見ていただけで、実は内緒にするような話ではなかったとか? いや、それにしては雷蔵の態度はおかしかった。裏紙か落し紙にするほか使い道のない反古紙を使って儲ける――言い換えれば金を稼げる、となると、やはり紙買おうに横流しの線が怪しい。
でも、学園内の文書が外部へ出て行くのがまずいことぐらい、一・二年生だって承知しているはずだ。
それでいて、部外者の三木ヱ門がいる場でこの浮かれっぷり。
……分からない。
分からないけれど、ここで踏み込んでみない手はない。
「"これ"って、誰の発想なんだ?」
いかにも感心しているそぶりで、わざと主語を曖昧にして尋ねてみる。
きゃいきゃい騒いでいる所へ水を差された久作はふと真顔になったが、きり丸は元気良く右手を上げた。
「僕です!」
得意気に言う。
「ふうん。……よく思いついたものだ」
「使えるものは使える限り形を変えても使う! どケチの基本です」
と言うことは、大量の反古紙を他の何かに変えるのか。元が紙だけにあまり広い用途には発展できなそうだが。
「お前のせこい知恵も役に立つことがあるんだな。本にまとめて売り出したらどうだ? きっと良く売れるぞ」
「んんんー……魅力的な提案ですけど、ドケチエはあんまり言い触らすもんじゃないんです」
どけちえ。どケチの知恵か、なるほど。
「田村先輩、こいつを焚き付けないでくださいよ。自費出版はもう懲りました」
久作が口を尖らせる。
「突庵先生が置いて行っちゃった本もそうだったし……、きり丸の理性が保っているうちに返せて良かったですよ。学園長先生のお友達の本を反古紙扱いで溶かしたら、さすがに大問題ですもん」
「溶かす――んだ」
「大量だったから、返しちゃうのも勿体なかったけど」