反古紙があると聞いて雷蔵が反応したのを思い出し、その話で軽く様子を見るつもりだったのだが、横木の中から飛び出したきり丸はあっという間もなく三木ヱ門の制服を捕らえぶんぶんと振り回した。
「それ本当ですか、ねえ本当ですか、ねえねえ本当にいっぱいあるんですか」
「ああ、吉野先生が埋まるくらいあった――やめろよ、上衣が破れるだろ! 久作、きり丸を止めろよ!」
「……っし! よぉし!」
何故か小さく拳を固めてガッツポーズをしていた久作の元へきり丸が駆け戻り、迎え入れた久作が両手を差し上げて、かち合い弾のような勢いでハイタッチをする。
図書委員たちの異様なテンションに呆気にとられながら、三木ヱ門はとりあえず上衣の裾を袴に詰め直し、空車に目をやった。「反古紙がどうかしたのか」という反応が返って来たら、その荷車に積んで物置小屋へ片付ける手伝いをしたらどうかと言い抜けようと思っていたのに、見事に空振った。
それはそれとして、反古紙があるとを雷蔵に伝えていたことに疑問は持たないのか?
という疑問を抱くことさえ的外れに思えるくらいのはしゃぎように、自分のほうこそ反応に困って、三木ヱ門は手持ち無沙汰な手で意味もなく頬を掻いた。
「……あのさ。要るのなら、早く事務室に取りに行ったほうがいいんじゃないか?」
「ですね。処理に手間がかかるし」
遠慮しいしい提案した三木ヱ門に、少し冷静になった様子の久作がうなずく。その横できり丸がニコニコしながら弾んでいる。
「あー、早まらなくて良かった。タダ働きのあとに儲け話が転がって来たぁ」
「……」
反古紙の処理に手間がかかるとか、それが儲け話に繋がるとか、ひょっとして無防備に重要な文句を喋ってないかこいつら。