単独行動に戻ったところで、文次郎を探す当てがないことには変わらない。
それでも、何か考え事があってぶらつくとしたらあまり人がいない方へ行きそうだ。校舎や長屋から離れる方向――倉庫や格納庫が並ぶ一画へとりあえずこのまま進むことにして、歩き出す。
……そう言えば、そこがすべての発端になった場所だ。
手甲の中に押し込んだままの金の蟹鐶がちくちくと手首を刺す。
木の下で上を向いていた鹿子の砲口の中へ玉の飾りが落ちて、たまたまそれに気付いた最低な気分の作兵衛が慌てて拾おうとして、そこに僕が戻って来て、竹谷先輩に変装した鉢屋先輩が通り掛かって――
「長い放課後だ」
思わず溜息が出る。
その溜息が途中で止まった。
作兵衛がどうしてあそこで逃げ出したのか今では分かっている。三木ヱ門が鹿子に付けた(と作兵衛が思っている)装飾を壊してしまったと誤解し、尚且つ、今日はもう叱られたり嫌な思いをしてへこむことに疲れきっていたからだ。
しかしそのもうひとつ前、そもそも玉の飾りがどうして上から落ちて来たのか、は未だに謎のままだ。それに、三郎次が唱えた光物好きカラス盗っ人説は左門が鼻で笑い飛ばしたが、では本来は誰の物なのかと考えると見当がつかない。
「こういうものの心当たりって、誰に尋ねればいいんだろうな……すずめが見てないかな。……ん?」
仙蔵に忍雀の情報を提供してもらうにはどんな対価がいるだろうかと無謀なことを考えていると、行く手からガタガタいう音が聞こえてきた。
くたびれきった様子のきり丸と久作が、空になった荷車を引いて来るところだった。