真面目な三年生を悩みの無限回廊に陥らせた朴念仁はきょとんとして、指先で額の包帯の下をくるくる掻いた。
「田村がそう言うのならいいけどさ。とにかくその、首に一撃を入れる寸前に、あの野郎がエライことを叫んだ」
『俺の後輩をたぶらかしやがって!』
顎が下がりっぱなしの口の中が乾き、瞬きを忘れた目がぴりぴりと痛み始めるまで、三木ヱ門はたっぷり絶句した。
「何がどうしてそうなった、んですか……訳が分からない」
「"チーム牡羊座"のことだ。多分な。誰かがどこかでおかしな説明を入れたんだろ」
「……きり丸、だ」
焔硝蔵に立ち寄ったあと行き先に迷っているところに、山本から解放された文次郎と出くわした。そこへきり丸も来て、「三木ヱ門と留三郎が皆に内緒で面白そうなことをしていると乱太郎に聞いた」と、チーム牡羊座の入会権を主張した――
その時にきり丸は「牡羊座だけの秘密結社」などと物騒なことを言ったのではなかったっけ。
思い返してみれば、あのやり取りの後から文次郎の態度が少しおかしくなった気がする。
「俺がお前を籠絡した、と取られるのはどっちにとっても失礼な話だけど、つるんでたのは確かだからな」
「つるむ、とも違うような気がしますけど」
相互利用とか一時共闘とか、もう少し殺伐とした言葉のほうが合っている。何しろ最初は「知っていることを全て吐け」という脅迫だったのだから。
「何にしろ、奴からしたら、喧嘩相手が自分の後輩と親しげにしてるのは面白くねえだろうよ」