失言を非難するようなことを言いながら、笑えばいいいのか同意すればいいのか迷っているような、どっち付かずの表情で団蔵が明後日の方を向く。
「笑ってるだろ」
「笑ってません」
「笑っちゃえよ」
「やめてくださいよー」
三木ヱ門が軽く脇腹を小突くと、団蔵は大げさに身をよじってそれをかわした。その声を聞きつけたのか、じゃれる2人の傍らを澄まして歩く異界妖号の向こう側から、小鳥がぱっと飛び立つ。
途端に三木ヱ門と団蔵はその場で動きを止めた。
「……あれも忍雀なんですかね」
「さあなぁ。……見張られている"かもしれない"って感覚は、思った以上に気に障るものだな」
木の下の作兵衛と鹿子を目撃してから今の今まであちこちですずめを見かけたが、何しろすずめなのだから、特段意識することもなかった。しかし、もしもあれらの中に忍雀が混ざっていたのなら、仙蔵が居ながらにして三木ヱ門の動向を掴んでいた可能性もある。
なぜあいつはあんなに右往左往しているのかなと好奇心を持たれてしまっていたら――途轍もなく厄介だ。三木ヱ門に目もくれずに八左ヱ門の顔の三郎を引きずっていったのだから、今のところ仙蔵の興味の対象の優先順位は生物委員会が第一位のようではあるが。
それとも、忍雀の見張りをつけつつ泳がされているのか。
「……あー。ちょっと、すずめを駆逐したくなった」
「それは聞き捨てならないな」