「鷹の代役に立花先輩が調練したら、どうしてだか忍鳥に出来上がっちゃったんだよね」
さらっと物凄いことを言って、「すずめだから忍雀(にんじゃく)かな」と喜八郎が首をひねる。
「……一体、何をどうしたらそんな事になるんだ……」
「さーねぇ?」
二の句が継げず、やっとのことで声を絞り出した三木ヱ門に、喜八郎はあっけらかんと答えた。
「狩りをやらせるのは無理そうだけど、折角だからその方向で鍛えてみる事になって、今は訓練中」
「標的が五年生と生物委員会になったのはどうしてだ?」
「うちの委員長の思い付き。でも、何かしら根拠はあるんだと思うよ」
「ふーん……」
会計委員会が追っている目標とかぶったのはただの偶然、と考えるのは無理がある。三木ヱ門は収支報告書から予算にまつわる不穏な事態に気付いたが、目端の利く仙蔵のことだから、他の場所から何かしらの兆候を掴んでいたのだろう。
……それを同室の会計委員長に教えてくだされば良かったのに。
いや、それで小猿に行き着いたら潮江先輩が「首を懸けろ」と詰め寄られることになっていたのだから、黙っていてくれて良かったのか?
「間諜のすずめは何羽くらいいるんですか?」
異界妖号の頭の上から飛び立っていったすずめを目で追いながら、団蔵が内緒話の声で尋ねる。
「二、三十羽くらいかな」
「意外と少ないんですね」
「精鋭だからね。それに利点もある」
喜八郎は少し体を引き、悩んでいる三木ヱ門ときょとんとする団蔵を等分に見て、言った。
「そこら辺にいるすずめの中に紛れ込んでカモフラージュできるし、ぱっと見ただけじゃ普通のすずめと忍雀の区別はできない。だからこうやって他の生徒に喋っちゃっても、実はそんなに痛くないんだよね」
「……すずめの個体識別なんて、大抵の人はもともとできないぞ」
「作法委員にはできる、ってところが重要なんだ」