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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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廊下を歩いて来たのが同級生たちだと気付いた雷蔵には、裏予算案の詳細を白状するつもりはなく、かと言って図書委員会の反古紙流用疑惑の弁明をする気もなかった。三郎と兵助が黒板の向こうから乱入する準備を整えるまでの時間稼ぎと、三木ヱ門が何かを察して後ろを見ないように、強く注意を引く話題をわざと小出しに振ってきたのだろう。
うろたえたり焦ったり、そういう態度は演技には見えないんだけど――
「……今、羽音がしなかった?」
三白眼になって無言で見上げる三木ヱ門からついと目を逸らした雷蔵が、きょろきょろと辺りを見回した。
「窓の外だろ」
「いや、もっと近かったよ」
無造作に窓を指す三郎に首を振り、雷蔵は天井の方へ顔を向けた。するとすぐに「あれっ」と素っ頓狂な声を上げた。
「長押にすずめがとまってる」
「え、教室の中?」
訝しげに振り返った三郎が「ありゃ、ホントだ」と呆れ声で言うのと同時に、ちゅん、と高い鳴き声がひとつ聞こえた。
「窓は全部閉まってるのに、どこから来たんだ? あいつ」
「黒板は開いてるけど」
「教室っていうか、校舎の中にすずめがいるのがおかしいだろ。どこかに隙間が出来てんのかな――あ、飛んだ」
振り向けない三木ヱ門にはすずめの姿は見えない。しかし、ぱたぱたと軽い羽音が一直線に遠ざかり、壁の向こうへ吸い込まれるように消えたのは分かった。
それを見送ったらしい兵助が不審げに呟いた。
「なんか変だな、今の」
「迷子なんじゃないか? 八左ヱ門がいれば保護してもらうんだけど」
「……気になるな」
「置いとけ、閑話休題だ。それよりも、人質の処遇について検討しようじゃないか」
三木ヱ門がぎりぎりと首を巡らせて三郎を見ると、八左ヱ門の姿をした三郎は、目と口を横へ引き伸ばすような妙な笑い顔をしてみせた。

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