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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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それでふと顔を上げると、いつの間にか校舎の前へ差し掛かり、あまつさえ通り過ぎそうになっていた。
「ああ、着いちゃった」
「え? 図書室に行くんですよね?」
いつにない威圧感を感じる校舎を見上げ、三木ヱ門は肩を落とした。不思議そうに言う団蔵に、うん、と生返事をして、意味もなく辺りを見回す。
この事態の進行を止める種は今に限って転がって来そうになく、ちゅんちゅんと鳴き交わすすずめの声だけが夕暮れの校庭に響いている。その声が緊張を含んだ警戒音に聞こえるのはたぶん自分の心境のせいだろうとため息をつき、三木ヱ門は校舎の中へ踏み込んだ。
「先輩、いま貸出延滞中の本はありませんか」
廊下を歩きながらふと傍らの掲示板に目を向けた団蔵が、振り返って三木ヱ門を見た。
「……えーと、あれは一昨日前返したから……、無い、かな。うん、無い」
「良かった。それなら少なくとも図書カードは飛んで来ませんね」
「怖いことをさらっと言うな。お前は大丈夫なのか」
「はい。本、読みませんから」
「読めよ。思うんだが、お前は話すべきことは分かっているのに、それを言葉にするのに難があるんだ。人と話すとか本を読むとかして語彙を増やせ」
掲示板に貼ってある『以下の者は本の貸出期限が過ぎています。速やかに返却して下さい』で始まる警告文を横目に説教する。
団蔵は「ゴイ」と繰り返し、難しい顔をして腕を組んだ。
「ゴイ……。サギ?」
「言うと思った」
ゴイサギは五位鷺で昇殿を許された位階持ちだ、うえにさぶらふ御猫と同じだ、と三木ヱ門が言うと、団蔵は釈然としない様子で首をひねった。
「動物なのに殿上人……。偉い生き物……。馬は無位無官……。御殿には上がれない……でも、荷物をいっぱい運んでえらいし賢い……偉くない? そんなの変だ」
「止まれ」
図書室の前を行き過ぎかけた団蔵の後ろ襟を、三木ヱ門は手を伸ばしてひょいと掴んだ。


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