※紙の利用法については「こういうことやってそう」と推測した自家設定です。
「紙買おう」は不要になった紙を買い集めて紙漉きなどに卸したり、自分で漉き返し紙を作ったりする流しの商人だ。学外への書状でもない限り学園内では古紙をリサイクルした漉き返し紙を使うのがほとんどだが、それでも紙それ自体がなかなか貴重品なのは確かだし、量がまとまれば単価は安くともそれなりに値がつく。
「けど、たとえ反故紙でも、学園の中で書かれた文書が外部へ出るのは良くないな。万一ドクタケの手にでも渡ったら、どこから何を読み取られるか分からない」
「僕が"いろは"を写した紙は逆さにしても重要文書には見えないと思いますが……」
「むしろ、重大な情報が隠れた暗号文書だと思われるかもな」
「ひどぉい」
しかし、図書委員のきり丸が信頼のおける「紙買おう」を知っているということは心に留めておいたほうが良さそうだ。突庵が持ち込んだ山ほどの自伝を売り飛ばさずに突き返したのは――図書委員長に止められたか、それともさすがに良心が働いたか。
そう、図書委員長だ。
「図書委員会が予算不足を賄うために、反故紙を集めてこっそり売っている、っていう線はあると思うか?」
三木ヱ門がそう尋ねてみると、団蔵は即座に首を横に振った。
「さっき先輩が仰った理由で、中在家先輩がお許しにならないと思います」
「……だよな」
会計委員会でも大量の紙を計算や書き付けで消費するが、それらは保管から破棄まですべて委員長の管理下に置かれ、学園の外はおろか委員会の外にさえ出さずに処理される。それを一枚でも理由なく持ちだそうとすれば、比喩抜きで委員長の鉄槌が振るだろう。
――でも、逆に考えたら。