一瞬静止した団蔵がまた首をひねり始めたので、歩きながら聞くと言って三木ヱ門は校舎の方を指した。
「図書室に行くところだったんだ」
「お伴しまっす」
先に立った三木ヱ門に小走りで追いつき、団蔵は「食満先輩は大怪我でした」と付け足した。
「そう言えば、喧嘩の後にしてはさっきの潮江先輩は無傷だったな」
「立ち向かう気は十分だったけど食満先輩が反撃できなかったんです。熱があるって言うのも嫌味じゃなくって、腕を掛けた時に、顎の下がすごく熱かったんですって」
自分の下顎の裏の柔らかいところをぷにぷにと押しながら団蔵が言う。
怪我をしたあとに発熱すると言うことはやはり骨折くらいしているんじゃないかと、その状態で重い荷を背負って山向こうから帰って来た留三郎の並外れた頑丈さに、三木ヱ門はほとほと感心した。羨ましくはないが。
「熱にうかされてうわ言を言ったんだ、なんて潮江先輩がぶつぶつ言ってたなぁ」
「お前の説明も取りとめがなくてうわ言みたいだぞ。いいや、僕が質問するから、それに答えろ」
「はーい」
いい返事をする団蔵の頭を軽くぺんと叩いて、ひとつめの質問をする。
「先輩に呼び止められて医務室へ行った時には、善法寺先輩はもうそこに留め置かれていたのか?」
「いえ。潮江先輩が拉致してる途中でした」
さすがに縄で引っ括ってはいないものの、背中に回した腕をがっちりと抑えられていた伊作は、隙を見て振り払おうとしては腕を絞られて悲鳴を上げていたという。伊作の本陣とも言うべき医務室へ連行したのは、用のない者は立ち入らないので他聞を憚ることなく訊問できるからだ、という文次郎の説明に、
「物凄くコワイことをなさるつもりなのではないかとヒヤヒヤしました」
「だろうなぁ」