「手伝……、う? え? 善法寺先輩は?」
「あ、やっぱりお分かりですよね。緑のこだまの正体」
「東北・上越新幹線」
「突っ込みにくいボケですねえ」
どこかで頭を打ったか熱でもあるのではないですかと、団蔵が真面目な顔で額に手を当てようとしてきたので、三木ヱ門はゆるゆると後ずさりしてそれをかわした。
「善法寺先輩は今、医務室に押し込めにされてます。見つけたのは忍たま長屋の近くの穴の中だそうです」
「アナンダ何号だそれ。で、潮江先輩はお前に何をしろって?」
「ええと……ですね。左吉と噂を撒いてる最中に潮江先輩に呼び止められて、医務室に行ったら食満先輩がいらして、でも、いつもみたいな元気がなかったんです。潮江先輩を見るなり、今日の俺はもう店仕舞いだとか仰って上掛けの中に潜り込んでしまって」
団蔵と左吉に伊作を見張るよう言い付けた文次郎は留三郎のその言葉に聞く耳を持たず、上掛けをひっぺがし挑発の言葉を叩き付けたが、本人が自覚している以上の大怪我を負って安静を言い渡されていた留三郎は珍しくそれに乗ってこない。怪我人と喧嘩しないで、と健気に抗議する乱太郎と諦め顔の伊作を尻目に、文次郎はいつもの調子で留三郎の胸倉を掴んだ。
「そしたら、その弾みで食満先輩の袖の中から手拭いの包みが落ちて――食満先輩って結構、派手好みでいらっしゃるんですね。意外だなぁ」
「……」
それはもしかしなくてもタカ丸に借りた手拭いだ。それで包んだ小さな飾りを作兵衛に見せるために、医務室で別れる前に留三郎へ預けたままになっていた。
しかし今それを喋るとややこしいことになるので、三木ヱ門はその感想を否定も肯定もしなかった。
「僕と左吉は離れて見てたからやり取りはよく聞こえなかったけど、その包みを拾って潮江先輩に差し出した食満先輩が何か話しかけたら、」
次の瞬間、壮絶な取っ組み合いが始まった。
「その寸前に潮江先輩が、俺の後輩を――えーと、タクラマカンとか多々羅放庵、しやがって、って大声で」
なんだそれは。