忍者ブログ
. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
文責
written by 大鷲ケイタ
バーコード
忍者アナライズ
09
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ご配慮、ありがとうございます……」
悄然とする三木ヱ門に清八はもう一度屈託のない笑みを向けて、それよりも異界妖号が厩の馬に言い寄る前に見つけないとと冗談めかした独り言を口にしつつ、木立をかき分けながら立ち去った。
「……。はぁ」
小さく息をついた三木ヱ門はまだ微かに揺れている梢にぺこりと頭を下げると、再び校舎の方へ歩き出した。
清八の年齢はいくつだろう。作法委員会への届け物を尋ねた時といい、大人――と言うか、世慣れた対応だ。人と人との間を繋いで回る仕事を職業にしていると、あんな捌き方が自然と身に付くのだろうか。
「相手の様子が変だと思ったら、それに突っ込むべきか受け流すのか即座に判断できる……。その基準は経験則か、それとも勘なのか……うーむ……これも対話術のひとつだなぁ」
木の下の作兵衛と鹿子との遭遇からこっち、行く先々で会う人たちとのやり取りの仕方に逐一苦慮している身としては非常に羨ましい能力だ。清八の性格がもともと謙虚で気遣い屋だから、というのなら……いま三木ヱ門にできるのは反省することだけだ。
「あとで団蔵に聞いてみようか……」
「――お呼びですかぁ!」
「うわあああ!」
突然ぐっとしなった頭上の枝から声とともに団蔵が降って来て、三木ヱ門は悲鳴を上げて飛び退いた。
器用に着地した団蔵は、尻餅をつくのはこらえたものの目を白黒させて言葉が出ない三木ヱ門を、してやったりの表情を心配そうに曇らせて覗き込んだ。
「そんな大声、先輩には珍しいですね」
「僕はカメレオンになりそうだ。いや、そうじゃない、清八さんの馬が逃げたそうだ」
「はい、承知してます。たった今指笛が聞こえたから」
「馬じゃなくてお前が来てどうするんだよ……清八さんはもう他の場所へ探しに行ったぞ。手伝わなくていいのか」
「大丈夫ですよぉ。自分で何とかするから」
それは清八がか、馬がか。
「部外者立入禁止の場所には入れないと困っておられたが」
「あ、そっか。でもまあ、そんな大げさな事にはなりませんよ、異界妖号は賢いから」
「……で、お前は指笛で呼ばれてここへ来たと?」
「いえ。田村先輩を手伝うようにと、潮江先輩に言いつかって参りました」


Copyright c 高札場 All Rights Reserved
PR
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]