図書室を覗いてそこに雷蔵がいたら、今度は逃さない。何を言われてもどんな揺さぶりをされても食い下がって、五年生の良からぬ企みに一太刀斬り込んでやる。
いなかったら――
久作ときり丸は突庵の曽祖父の自伝を返しに行っていて不在。怪士丸は一年ろ組の教室にいて、雷蔵は校舎の中を出歩いていた。
消去法で本日の図書室当番に思い当たった途端、三木ヱ門の駆け足が鈍った。
「中在家先輩に、不破先輩はどこにいらっしゃるのか尋ねる……のか?」
三木ヱ門が追っているのは共謀する五年生だ。しかし図書は図書で、予算の絡む隠し事をしている気配がある。そんな所へ会計委員が首を突っ込んで行けば、図書委員長に警戒を抱かせる恐れは十分過ぎるくらいにある。
あくまでさり気なく、軽い調子で尋ねてみれば乗りきれるかもしれない。だが、地の底から湧くような声で雷蔵に何の用があるのかと問い返されたり、あるいは物問いたげな表情で無言のままじいっと見据えられたりした場合――その圧力に屈さずにいられる自信がない。
「……どうか居てください」
口の中で呟いて築地塀の角を曲がる。
そしてその向こうに立っていた人に、三木ヱ門は勢い良くぶつかった。