その場合、兵助と"伊助"こと三郎が真っ先に向かうのは図書室だろう。
しかしその頃、雷蔵はほとんど人が通らない校舎裏の渡り廊下にいた。
何故そこにいたのかと尋ねる三木ヱ門に、雷蔵は言を左右にしてはっきり答えず、汗牛充棟作戦を指したつもりで「久作に聞いた」という三木ヱ門の言葉に、目に見えてうろたえた。ということは、雷蔵が渡り廊下をうろついていたのは図書委員会の「行動」のためで、同級生とこっそり落ち合うためではない。
あやしいつづらを事務室へ届けると言って立ち去った雷蔵も、その実、兵助と三郎に会いに行こうとしたのなら――逆に校舎の外へ出て焔硝蔵へ足を向けたのでは?
それとも、渡り廊下での何らかの首尾を委員長に報告するために、一度図書室へ戻ったか?
「不破先輩にとってどっちがより重要なのか……だな」
図書委員会二番手としての責任か、同級生との秘密の共同戦線か。自分ならどちらを選ぶ――と我が身に置き換えて考えてみようとしたものの、考えるまでもなかった。
三木ヱ門は踵を返し、再度、校舎へ向かって駆け出した。
「……少なくとも今はまだ、四年のヤツらが一致団結して何かするわけないんだよ」