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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「猿?」
「まさか、このタイミングで」
口々に言いながら音のした方へ目をやると、猿にしては背の高い影が枝葉を押し分けてぬっと現れた。そこに人がいるとは思っていなかったのか、灌木の間から抜け出ようとしていた足がそこで止まる。
「何やってんだ、お前ら」
片方だけ目を細めた顔に訝しげな色をありありと浮かべて、文次郎は池の端で向かい合って正座している三木ヱ門と八左ヱ門に問いかけた。
最前に見た引っ詰め髪ではなく、前髪を下ろした見慣れた顔だ。しかし後ろの髪は後頭部の中央でざっと束ねただけの無造作な結い方で、首に結び付けたふくら雀は未だにそのままだ。文次郎の背後にちらちら動く小さい姿をよく見れば、右肘の後ろに団蔵、左肘の後ろに左吉がくっついている。
ひょいと首を伸ばした団蔵が、思わぬ人物の登場に固まる三木ヱ門と八左ヱ門の格好を見て、その首をかしげた。
「これって、床い」
言い終わる前に文次郎の肘が頭の天辺に落ちる。
「でも、夜具がな」
口を挟みかけた左吉の頭頂部にも肘が降った。
「……六年生が一年生にエルボースタンプは身長差があるんだからヒドいですよ」
声もなく頭を抱えてしゃがみ込む団蔵と左吉を見て思わずのように意見した八左ヱ門に、文次郎はじろりと胡散臭そうな一瞥を投げた。
「お前は牡羊座だったか、竹谷」
「へ? いえ、射手座です」
「ふん。――猿は見つかったのか」
「うぇ」
腹を殴られて空気が漏れたような声を上げた八左ヱ門が目だけ小さく動かして三木ヱ門を見る。三木ヱ門は口の端で「潮江先輩がご存知なのはそれだけです」と素早く囁いた。
一間半ほどの距離がある。声は聞こえなかっただろうが、そのやり取りは見えたらしい。腰に両手を当てて地面の上の二人を見下ろしていた文次郎は、見るからに不興な顔つきになった。


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