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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「その時俺は巣板を持った手ごとぱっくりくわえられた人の気持ちになった」
「分かるような分からないような……」
先に話した通りこれは山伏から貰ったものだし他の薬種を手に入れる伝手なんてない、薬だって冬越しに備えて体力の落ちている生き物に与える為で何もやましいところはない、と嘘に嘘を重ねるやましさに心を重くしながら八左ヱ門が言い切ると、伊作は実に簡単に「それは嘘だね」と片付けた。
伊作はそこで初めて提供された薬草はこの国のものではないことを言い、言葉を失う八左ヱ門に、渡した瓶を指さしながら「その薬の用法用量は伝えなくていいのかな」とにっこり笑いかけた。体の大きさや目方によって薬の適量は変わってくるけれど、その見極めは自分でできるんだね? もしも使い方を誤ったら――
何が起こるか分からないよ。
「……脅迫」
三木ヱ門が確認するように呟くと、八左ヱ門はがっくりと首を落として頷いた。
「でも多分、本当に分からないんでしょうね」
「だからこそ、正しい使用法を聞かない訳にはいかなかった」
それでも可能な限りはぐらかそうとした。さっき三木ヱ門にしたように、この話を知ったら万一の時には首が飛ぶ、少しでも他人に漏らせばその相手も巻き込む、その覚悟はあるのか、何の咎もない人を連座させる事になってもいいのか、と脅しを込めて言い募る八左ヱ門に向かってひらひらと手を振り、「だいじょーぶだいじょーぶ」と気安く請け合った。
口調は軽くても、尋常ならざる雰囲気を感じ取っているようではあった。
その上で、ここで食い下がれば憧れの薬種のあれこれが手に入る伝手ができると確信した伊作には、頑として引く様子はなかった。
「……ので、口を割らざるを得なかった」
猿に関わるあれこれを他言しない代わり、伊作が所望する品を融通できるよう貿易商にはからうが、諸共に命が俎上に乗ったことはしっかり心に留めておいてくださいよ――と釘を刺す八左ヱ門に、伊作は一言で答えた。
「おっけー。……だそうだ」
命と探究心を天秤にかけたら、命がすっ飛ぶ人の考えは分からん。
「ああいうのを研究に淫するって言うんだろうな」
「それは言葉が過ぎ……ても、ない、ですね」

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