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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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薬草や木の実を蜜に漬けてしばらく置き、蜜の色が変わったところで中身を濾して、匙に絡むまで煮詰めれば完成。それには二十日あまりかかると伊作は言い、実際、八左ヱ門から薬草を受け取ってからきっちり二十日後に小振りな瓶に入れた「強壮薬」を引き渡した。
「その時の善法寺先輩がさ……こう、頬は紅潮してるし、目がキラッキラしてて、……昂揚っていうか、恍惚なんだか……見ちゃいけない顔だった、あれは」
「何ですかそれ」
話の流れが明後日の方向に転がり落ちそうな予感がして、思わず三木ヱ門は突っ込んだ。
反射的に常套句で突っ込んだだけで特に答えを求めた質問ではなかったが、律儀にも長考した八左ヱ門は「少しでも穏当な言葉を選ぼうと努力しました」という表情になって、そろりと言った。
「お触り禁止物件な顔?」
襟を取られたまま三木ヱ門は思い切り身を引いた。
「いや訳が分かりません。なんですかそれ」
「いやいや待て待て待て。いかがわしい意味じゃなくてだな、例えばだ、田村が山で蜂蜜をたっぷり蓄えたミツバチの巣を見つけて、巣板をひとつ失敬したとする」
大急ぎで首を振った八左ヱ門は妙に真剣な顔をして、見当違いに聞こえることを話しだした。
「……はあ。はい。巣板をひとつもらいました。それで、どうしましょう」
「季節は冬に入りかけの晩秋で、深い山の中を歩いていたら、後ろから重い足音が追いついてきた」
「はい。太めの誰かが後ろにいました」
「誰だろうと思って振り返ると、そこには冬眠前の熊がいた」
「……それはくまったなあ」
「おい、大丈夫か。アタマついて来てるか」
危ぶむように顔を窺う八左ヱ門に引きつり笑いを返して、三木ヱ門は続きを促した。


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