何だかんだで行き来のできた貿易商に「こういう薬草は扱っているか」と問い合わせたら「あるよ」と簡単に出て来たので、まさかそんなに貴重な品だとは思わなかったのだ。
それなのに一体どうやってすぐに用意できたのかと、伊作は驚いた。鳥か獣でなけれな通えないような深山幽谷にしか生えない、珍しくて高価な草なのに。
「この日ノ本の国の山ん中――とは、今思えば、確かに言ってなかった」
不審を感じた伊作は敢えてそれを言わずにおいたのかもしれない。
入手先をごまかそうとした八左ヱ門は、そこで下手を打った。
「三治郎の知り合いの山伏からたまたま貰った、って言っちゃったんだよな……」
山伏は修行の場を人里から遠く離れた、それこそ鳥獣しか住まないような山奥に求め、俗人には想像もつかないような修練に励むという。しかしそれでも海外修行までしてくるような猛者はいない。
つまり八左ヱ門が「山伏に貰った」と口にした時点で伊作には嘘がばれていた。
「――はずなんだけど、その時は何も言われなかった」
「……それは怖いですね」