「俺はその輪に入ってないよ」
「……仲間はずれ?」
「ヤなこと言うね」
八左ヱ門が別件で手一杯なのが分かっていたから、この上さらに面倒を負わせないよう五年生たちが気を使ったのだろう。その気づかいにどれほどの理があるのかはともかくとして。
そのくらいは三木ヱ門も察しがついたので、わざとらしく声をひそめて囁くと、八左ヱ門もわざと鼻にしわを寄せて見せた。
勘右衛門も蚊帳の外に置かれているようだが、その理由を推測するには今ひとつ勘右衛門の周辺情報が足りない。委員会単位での企みらしいのは確かだから、学級委員長委員会からは既に三郎が参加しているので員数外――ということだろうか。同じ委員会の中に事情を知る協力者がいたほうが都合が良さそうなのに、と三木ヱ門は考えた。
各委員会へ抜き打ち監査に入る場合、その情報が外部に漏れないよう会計委員会の中でも決行当日まで伏せられているが、顧問の安藤との相談が済んだあとに文次郎は三木ヱ門にだけは前もって伝える。事前に何を準備するわけでもないが、いざ行動開始となった時に心構えができているやつがいれば何かと円滑に進むから、文次郎は言っていた。
憶測に推測を上乗せしてみても埒が明かない。とりあえず勘右衛門のことは脇に置く。
「四つ目です」
「うん」
「善法寺先輩の役割はなんですか」
諦めたように頷いていた八左ヱ門が、ふらっと目を泳がせた。