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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「あのひそひそ喋りも引っ掛かるんだが……気になるなら気にしていろ、って言い方もな」
「気になることなら山とあるんですけどね」
さり気なく三木ヱ門が言うと、八左ヱ門は屈託なく「田村も大変だなー」と笑ってぽんと三木ヱ門の背中を叩いた。
予算絡みの隠し事があるはずなのに、会計委員を前にしてこの悪びれなさといったら。
水べりでちゅんちゅんと飛び回るすずめの一群を見遣りつつ、三木ヱ門は心の中で呟く。生物委員会の保護下にある生き物に対する責任は、他の何をも凌駕するというのか。
それとも単に、委員長以外の会計委員なら与し易しと思っていらっしゃるんだろうか。
「そう言えば、田村は俺に用があるんだっけ? ……なんで膨れてんだ?」
「顔の体操です」
ぷしゅうと頬の空気を抜いて素っ気なく言う。なんだそりゃ、と言って八左ヱ門はわしわしと頭を掻いた。荒縄を束ねたような長い髪がそれにつれて揺れる。
「医務室で孫兵に会いました」
唐突に三木ヱ門が言うと、八左ヱ門は瞬間、動きを止めた。
白目がちかちかと瞬く。軽く上げた眉がすぐに下がった。頭にやっていた手を頬に当て、嘆息する。
「そうか」
「はい」
双方ともそれ以上は語らない。
きみこの手当に駆け込んできた孫兵は三木ヱ門に問い詰められて渋々、内緒の小猿にまつわる秘密を喋った。保健委員と留三郎のどたばたを後に厳しい表情で医務室から出て行った後、裏山から帰って来た八左ヱ門に会っていれば、三木ヱ門にあれこれ教えてしまったことを伝えて謝っているはずだ。
逆に言えば、学園に戻ったあとの八左ヱ門が孫兵に会っているなら、三木ヱ門が仔細を承知していることを知っているはず。
……この反応なら、当たりだ。
向い合って無言で佇むふたりを、首をかくかくと傾けながら眺めていたすずめが、ぱっと飛び立っていった。


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