「ぶつかった時に微塵を抜かれたのかなー」
八左ヱ門は回収した私物を丁寧に懐に収め、あの暗い中で正確な投擲をするとはと唸った。
「園田村で、初めて撃つ砲弾を試射もなしに目標に当てたもんな。そういう勘はさすがだよなぁ」
「ああ、ユリコを持って行かれた時……」
大事な小型カノン砲を拉致された上に「使えなかった」とそのまま返された一件だ。あの時は他にも諸々あってプライドがぺっしゃんこになった三木ヱ門はしばらく放心から立ち直れなかった。思い出すと今も若干、魂が抜け出ていきそうな感覚に陥る。
「……おーい。帰ってこーい」
「……はい。臼砲で震天雷を撃つのに、実際に発射したのは虎若だそうですが」
同じ火器の括りとはいえ虎若が得意なのは火縄銃だ。砲の仰角や方向はおそらく火器のスペシャリストである仙蔵が助言したに違いない。
そう言えば、三治郎と孫次郎と一緒に小猿を探していた虎若はどうしているだろう。
……いや、待てよ。木下先生が左門から回収した小猿が忍術学園に帰って来ているのは確かな筈だが、不破先輩(暫定)が持っていた穴の開いたつづらが再度の脱走の痕跡だとしたら、それは直ちに竹谷先輩に伝えるべきだろうか。
しかしそうすると、内緒の猿やその他のあれこれについて三木ヱ門が知っていると手の内を晒すことになってしまう。
迷いながら歩いているうちに、行く手に光が差してきた。