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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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予想外の速さに、八左ヱ門は気を呑まれたように寸時ぽかんとした。
「……え、即答?」
「絶対に確信があるわけではないのですけど」
正直に言って、三木ヱ門は眉を下げてみせる。
「立花先輩に、委員会で担っている責任を放り出すことはできない、と反論なさったでしょう」
あの作法委員長を前に、一歩も引かぬ体で敢然と。
八左ヱ門がふと手を上げて手のひらで頬をこすった。その手も泥が付いていたのか、汚れが引き伸ばされただけで、きれいにはならない。そのまま頬を押さえて嗄れ声で言う。
「こんな目に遭っていれば、"鉢屋"なら投げる?」
「とは思いませんが、もう少し違った態度や言い様をされるかと」
六年生がいない委員会の中の最上級生という立場は三郎も八左ヱ門も同じだが、委員会活動の内容は大きく異る。主に学園行事に関わる諸事一切を取り仕切る学級委員長委員会と、小さな虫から大きな馬まで数々の生き物を一手に面倒見ている生物委員会と。
委員長代理の八左ヱ門が作法委員会へ引っ立てられてしまうと下級生たちが困る。ひいては虫も馬も困る。飼育されている生き物にとって、困ることは即、命に関わる。
「”いったん生き物を飼ったら最後まで面倒を見るのが人として当然”」
三木ヱ門が諳んじると、八左ヱ門はぱちぱちと素早い瞬きをした。
「――を金科玉条に掲げ、生き物の命を双肩に負うていらっしゃる竹谷先輩ならば、あのような"体当たり"をなさるのも納得がいきます」
「くすぐったい」
ぼそっと八左ヱ門が言う。突っ込まれたくない独り言だろうから聞かぬふりをして三木ヱ門は続ける。
「それに、さっき抱え上げられた時の匂いが」
「ええ? 俺、におう?」
食草を刈ったり飼育小屋を建てたり、脱走した生き物を捜索したり、生物委員会は大抵屋外で活動しているから、毎日たっぷり陽差しを浴びている。それならその匂いがすっかり身体にしみついているのは、
「竹谷先輩のはず、です」
さあ、当たりですか外れですか。
「うー……。参った。当たり」
そう言って八左ヱ門は小さく両手を上げた。


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