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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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詰め寄られたぶん八左ヱ門が軽くのけぞる。
開いた距離をまた三木ヱ門が詰める。
袖を取られている八左ヱ門は大きく下がれず、困ったようにまた少し足を引く。汚れた顔の中で紙縒りの火に映える目が妙にきれいだ。
「うぉーい。睫毛が焦げるよー」
そんなことをもそもそ言い、紙縒りをかざしてまじまじと観察する三木ヱ門から首をねじって顔をそらす。自分の肩の後ろを見るような無理な姿勢になった八左ヱ門に向かって、三木ヱ門はもう一度同じ質問をした。
「どちらです?」
手首をくるっと回して掴んだ袖を手に巻き付け、ますますしっかりと確保する。
「さっき答えた」
「でも、念押しには答えてくださいませんでしたね」
「……鉢屋か、竹谷か、それ以外かって?」
「三番目の可能性はないものとします」
同じ顔が三人以上もいたらややこしくて仕方ないからと三木ヱ門が断言すると、八左ヱ門は俯いたまま少しだけ目を上げて、失笑のような苦笑をした。
「田村の都合じゃないか、それ」
「変装をしてうろつく必然性のある人物が鉢屋先輩以外にはいないとか、こう申し上げる理由はあります。でもそれはいま重要じゃない。五年生のうちのお一方を抑えたことと、出来得れば先輩は竹谷先輩ご本人で」
「べっくし」
八左ヱ門が思い切り話の腰を折る力強いくしゃみを放った。それで言葉の続きを見失った三木ヱ門が瞬間、絶句する。
「えーと……なんだ、"竹谷"を探してるんだったっけ。でも、"鉢屋"は用無しというわけでもないと」
今のくしゃみで余計に喉の調子をひどくした八左ヱ門が三木ヱ門に代わって言う。
「大体、そんなところです」
「でも俺は逃げたい――けど、逃がしてくれないんだろ」
足に絡まった鎖が暗がりの中でがちゃがちゃ鳴る。
はあっと溜息を吐いた八左ヱ門は仕方なさそうに三木ヱ門に向き直り、自分の顔を指さした。
「田村は、これが、どちらだと思う」
火は近付けてくれるなよと釘を刺す。
「言ってみなよ。その答えが合っていたら、確かに本人だと正直に認める。間違っていたらこの場は解放しろ」
「えー……と」
顎に手をかけて眉を寄せた三木ヱ門はわずかの間考えこむ素振りをしたが、大して迷わず答えを口にした。
「ここにいらっしゃるのは、竹谷先輩だと思います」


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