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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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顔を上げ、背中を伸ばし、仙蔵と対峙する。
睨み合う二人に挟まれた三木ヱ門は居たたまれない。そろそろと後退り、背中が壁に行き当たると、そのままカニ歩きで八左ヱ門の後方へはけた。
「……どうしよう」
口の中で呟く。ただの落とし穴被害者たちだと思っていたものが、どんどん不穏な空気になってきた。
作法委員会は八左ヱ門に――いや、八左ヱ門の「顔」に、なにか含むところがあるようだ。この大層な汚れっぷりは、もしかしてわざとそうしたのか。「顔」の価値を失わせようとして?
なら、この「八左ヱ門」は三郎ではないのか。
三郎なら、変装を捨てて雲を霞と逃げ出せばいい。敢えてそれをせず、痛い目に遭うのを承知で同級生のために囮になって追手を引きつけるような殊勝な行動は――多分、しない。それよりも追手を撒く必中の策を考え出すほうに尽力するだろう。
そもそも、誰かに追われて屋根から落ちて来た八左ヱ門と、いま目の前にいる「八左ヱ門」は同一人物だろうか。あの強烈な石礫は仙蔵の仕業か?
ゆったりと腕を組んで立っている仙蔵を盗み見て、三木ヱ門は内心で首を傾げる。
精密射撃のような礫を放つくらい、涼しい顔でやってのけそうではある。しかし、足音荒く屋根の上を駆け回り落雷の如き怒声を上げる仙蔵の姿は、どうにも想像し難い。怒りが頂点に達するとやるのかもしれないが。
どうしよう。
横取りするのはおろか、ここで「八左ヱ門」に肩入れしたら、作法委員会を敵に回すことになりそうだ。
その敵意が自分だけに向くのならいいが、作法委員長と同じクラスで寮も同室の文次郎――三木ヱ門の先輩である会計委員長にも、きっと類が及ぶ。
どうしよう……。
必死に考えを巡らせる三木ヱ門が無意識にぎゅっと目を閉じた瞬間、身体が浮き上がった。


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