忍者ブログ
. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
カレンダー
07 2025/08 09
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
文責
written by 大鷲ケイタ
バーコード
忍者アナライズ
16
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

その顔形をしていさえすればと、汚れの中に沈んでいる八左ヱ門の目鼻を視線でなぞるようにじっくりと眺め回す。
どちらでもいい――ということは、仙蔵は三郎が八左ヱ門の変装をしていることを承知している。
その上で、中身は問わないとはどういうことだ?
三木ヱ門が振り向くと、この隙に寸刻みに後退ろうとしていた「八左ヱ門」がぴたりと止まった。白目をきょときょとさせて上目遣いに三木ヱ門を見上げる様子は何か物言いたげだが、口はしっかり結んでいる。
一体どちらなんだろう?
ただでさえ外見だけでは判別が難しいのに、これほど顔が汚れていては完全にお手上げだ。一言だけ聞いた声なんて、鉢屋先輩とも竹谷先輩ともつかないくらい嗄れていたし。
「……あの。私からも質問して宜しいでしょうか。こちらの真贋とは関係無いのですが」
ふと思いつき、こちら、と言いながら手で「八左ヱ門」を示すと、「真物か贋物か、とはひどい……」とぼそっと呟いた。その声はやはりガラガラだ。
「何か?」
ため息を吐くように仙蔵が促す。
「その発声です」
三木ヱ門が言うと、仙蔵はつと手を上げて自分の喉に触れた。
「先程からずっと常より声量を抑えていらっしゃる。兵太夫もさっきまるで内緒話のような声音で喋っていたし、藤内はほとんど矢羽音のような声を出していました。作法委員たちがそうしていることに、理由はあるのですか」
「ふむ。気になるか」
ととん、と指先で喉を叩き、仙蔵は再び幾分意地悪く見える笑顔をした。
「なら、そのまま気にしていろ」
「それが回答ですか?」
「そうと受け取りたければな。それに、あやふやなものを掴んでも田村は困るだろう? なればこそ、そこの五年は作法委員会が預かる」
「……私は、」
仙蔵の射るような視線を受けた「八左ヱ門」が、ようよう口を開いた。


Copyright c 高札場 All Rights Reserved
PR
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]