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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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その顔に土や泥がついているのは勿論のこと、額と言わず鼻の下と言わず炭か墨をなすりつけたように黒ずんで、元の肌の色はほとんど見えない。
それでも、顔の造作は八左ヱ門だ。じっと見詰めている三木ヱ門と一向に目が合わないのは、わざと目を逸らしているのではなく、一点に注意を向け続けられないほど疲れきって視線がフラフラしているせいらしい。
鉢屋と名乗った低い声は三郎なのか、別人なのかよく分からない。それほど掠れている。
竹谷先輩の変装をした鉢屋先輩の振りをした竹谷先輩――という可能性も、無いではないのだ。
「本物?」
声をひそめて三木ヱ門が尋ねると、絡まった手足のどれが自分のものか見失ったかのように呆然としていた八左ヱ門は、するりと目だけ動かした。そんな仕草をすると、白面赤目の時の文次郎のように白目ばかりが妙に目立った。
唐突にその顔が前のめりに倒れた。
「あれ、田村先輩だ」
ひよひよと囁くような声の主は、八左ヱ門の背中を押し潰すようにして人玉から抜け出て来た兵太夫だった。左目の上から右の頬まで、こちらも墨をたっぷり含んだ刷毛で佩いたような黒い線が引かれている。
その黒の中でちまちまと目が瞬く。
「ここ、どこですか?」
「……七松先輩が掘った地下道。その顔はどうした」
「へえっ。凄いなあ。あ、僕、部屋でからくりの図面を引いている途中だったんですけど、筆を持った手でうっかり顔を掻いちゃって、洗おうとして井戸端へ出たら急に召集がかかっ」
喋っている途中の兵太夫が消えた。
いや、後ろ首を掴んでストンと引き倒されていた。
目を丸くする三木ヱ門の前で、ようやくほどけた人玉の中身がゆらっと立ち上がった。


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