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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「あの、僕が、こけたんです」
喜三太の横に顔を並べた平太が自分の鼻を指差す。言われてよく見ると、ちんまり丸い鼻の頭とおでこが強くこすったように赤くすりむけている。
転んで、咄嗟に手が前に出なくて、顔から地面に落ちるとこうなるが――
「怪我がそれだけで済んだのなら幸いだが、仮にも忍者のたまごがその仕儀は情けないぞ」
「神崎先輩をお部屋へお連れする時、神崎先輩が走りだした弾みに縄が絡まってしまいまして」
「……。ごめん」
しんベヱに託した左門付きの縄の間に、重石代わりに喜三太と平太も巻き込んだのは三木ヱ門だ。
「それで医務室に行ったら、膏薬だらけの食満先輩が床(ゆか)に伸びていらして」
神妙な様子で黙っていた作兵衛が、平太のその言葉にくすんと鼻を鳴らした。吹き出したのかと三木ヱ門が目を向けると、作兵衛はどんな表情をしたらいいか決めかねているのか、くしゃみを堪えるような妙に力の入った顔つきをしていた。
その顔で、いくらか鼻声になって言う。
「確かに打ち身は幾つも出来ていましたが、あれは大げさに過ぎます――過ぎるように見えます」
「そう言うということは、作兵衛も医務室へ行ったのか。いつ行ったんだ?」
「僕がこけたあと、一緒にです」
「んん?」
平太が補足してくれたが、事の前後が一瞬分からなくなって三木ヱ門は唸った。今日は自室で大人しくしていると決心した左門を用具の一年生たちに任せたのは、職責に燃える乱太郎と左近を焚きつけるよりも前だ。
「先にこの廊下で先輩にお会いしたあと、左門を連れて部屋に戻ろうとしたら途中でまた脱走しかけて、たまたま居合わせたこいつらが捕まえるのを手伝ってくれたんですが」
地面で打った鼻がずっとしくしく痛かったのが、捕物騒ぎのどたばたの勢いでとうとう鼻血が出てしまったので、左門を部屋の中へ追い込んだあと医務室へ連れて行ったのだとかいつまんで作兵衛が説明する。
「――そしたら食満先輩もおいでだったので、田村先輩の言伝てをお話ししたら」
"逃げたすずめは懐に入った"。
それと"朴念仁"!
「それを聞いた食満先輩が、――あの、何と言うか」
「食堂のおばちゃんが使ってる古い金物のお鍋みたいな顔になりました」
言いづらそうに口ごもる作兵衛の横で、しんべヱがあっけらかんと言う。
なるほど、ベコッとへこんだのか。



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