それも言い訳か、と悄然として呟く。
「どうしても予算が足らないなら、用具みたいに自分たちで稼ぎ出すのが本当だよなあ。……ああ、だけど、用具が出稼ぎに行かなくちゃならなくなったのは"ねずみずもう"のせいなのか。そんなことを仕掛けなければ、先輩が怪我をすることもなかったんだ……」
雷蔵が問わず語りにとつとつとこぼす悔悟の中に混ざっていた妙な言葉に、三木ヱ門は心の中で首をひねった。
ねずみずもう。不寝不見詣――、根摘み図網、それとも鼠相撲?
それらしい漢字をいくつか当てはめてみて、また首をひねる。相撲取りのネズミのせいで用具委員会は生物委員会に――生き物のために非常手段を取るのは生物委員会だけだから、さっきの雷蔵の言葉でこれは確定だ――予算を持って行かれた。
とは、どういうことだ?
野見宿禰さながらに強面の雲つくような大ネズミが予算を強請りに来る光景を想像して、三木ヱ門は「ぺん」と自分の額を叩いた。
そんなお伽話みたいな話があるものか。大体、用具委員長に力押しで迫ったところで返り討ち必至だ。
そうじゃなくて、もっと言葉通りに考えてみると――生物委員会が用具委員会へ持ちかけた勝負は「鼠相撲」で、それに負けたために用具委員会は賭け代にした予算を失った。
生物委員会がネズミを飼育していて勿論不思議はないが、松明に混ぜる糞を取ったり虫獣遁に使うために、一般の生徒がネズミを飼っているのも珍しくない。
そのネズミは適度に健康で元気があればよいので、格別に力が強い必要はない。
が。
お互いが世話をしているネズミのどちらの方が強いか勝負してみませんか、ああでも生物委員会が手塩にかけて育てているネズミにそこらの凡百ネズミが敵うはずありませんよねーすいません失礼しましたぁ忘れちゃってくださーい。……とでも挑発されたら。負けず嫌いで切れっぱやい用具委員長は、多分、乗る。
……保健委員長謹製ドーピング蜜漬けの出番はここか。