「どちらかと言えば周囲を巻き込む側じゃないのか」
「魚心あれば水心、不運あるところに保健委員あり、です」
疫病神や陰の気がひとたびもぞっと蠢けば、知らず知らずそれに即感応するのが保健委員です。
「……不運慣れし過ぎていると言うか、達観してると言うか」
勘違いから衝立ごと踏み倒してしまった左近が恨み事のひとつも言わずにけろりとしていたのを思い出して、三木ヱ門は首をすくめた。そう言えばあとで石火矢のレポートを見てやることになっていたっけ。
それはさておき、傷めたら返せなくなるというのは妙な言い様だ。
図書室の書物の中に他所からの借り物があるとは聞いたことがない。書物は一般に貴重品だからそう気軽に貸し借りできるものではないし、どうしても必要なら写本を作れば事足りるし、なにより元気を有り余らせた子供がいっぱいの忍術学園に預け置くのは危険過ぎる。
と、なると。
「雀躍集の返品が叶ったのか?」
ただし汚したり傷めたりしたらその分は買い取り、だからきり丸は予算を無駄遣いしないように必死、とか?
三木ヱ門の質問を聞いた伏木蔵はきょとんとするだけだったが、怪士丸は悲しげな顔をしてふるふると首を振った。
「まだ入荷してませんが、近いうちに届いちゃいます」