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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「黒板を交換し終わって、古い方を外に下ろそうとして窓を開けた時に、きり丸と久作先輩が何か抱えてばたばた往復してるのが見えたんです」
何やってるの、僕も手伝う? と窓辺から声を掛けてみたが、二人とも耳に入らない様子だったと、図書委員の怪士丸が眉の両端を下げる。
急ぐあまり周りの音が耳に入らなかったんじゃなくて、呼びかける声がひよひよして聞こえなかったんじゃないかと三木ヱ門は思ったが、黙って頷き続きを促す。
「僕たちは僕たちで蜘蛛梯子を吊ったり、黒板に縄を掛けたり作業をしていたから、ずっとは見てませんでした」
「でも少ししたら、窓の下でバッシャーン! ぎゃー! って」
その騒ぎに驚いた一年生たちと日向と勘右衛門が窓に取り付いてみると、地面に落ちた三、四個の箱を中心にきっかり正反対の方向へそれぞれ吹っ飛んで転んでいる二年生と三年生が見えた。三年生の傍らには引っくり返った水瓶があり、そこから溢れ出た水が乾いた地面に広がって水たまりを作っているところだった。
「水瓶を抱えて歩いて来た数馬先輩と、箱を持って走って来た久作先輩が、側面衝突したみたいです」
「久作のやつ……」
また前が見えないくらい荷物を抱えていたのか。三木ヱ門が言うと、二人はちょっと物問いたげな顔をしたが、怪士丸がすぐに察した。
「ええ、はい、餡子乳糖作戦だと思って、手伝おうかって言ったんですけど、違ったみたいで」
「あんこにゅうとう?」
学園長の庵を本でいっぱいにする作戦に、なんだかやたらと甘そうな名前が付いたものだ。三木ヱ門はその言葉を頭の中であちらこちらへ転がしてみて、しばらくしてから「それは"汗牛充棟"ではないか」と思い当たった。
「……久作先輩が落とした箱の中身がこぼれて、そこに水が掛かりそうになって、後から走って来たきり丸がそれを見て大慌てで拾い上げて、」
傷めたら返せなくなる! と凄い剣幕で叫んだ――のだと、怪士丸は両手を口に添えて大声を出す真似をした。その勢いに気圧された数馬はなし崩しに荷運びの手伝いに加えられ、積み終えると今度は荷車の押し係を当然のように頼まれた、らしい。
自分の仕事はまだ終わっていない、どころかやり直しの憂き目に遭っているというのに。
「なるほど。巻き込まれ不運か」
「保健委員ですから」
それで全ての説明がつくと言わんばかりの口調で伏木蔵が言った。



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