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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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右手と左手の人差し指を立てて、歌うように節を付けて伏木蔵が言う。
「鎮痛膏・改って。戦闘機じゃあるまいし」
「正確に言うと改・三号です」
基本になる消炎鎮痛薬の調合は、知っていれば便利だからと新野が保健委員に教えてくれた。でも、そこへ更に何を加えたら秘薬"鎮痛膏"の完成なのかは、新野だけの秘密だ。
研究熱心な保健委員長は自分なりに工夫してその基本の調合に薬種を組み合わせ、何度か試作品を作った。
作った薬は実際に使用して効果のほどを確かめる必要があるが、万一のことを考えると、元の身体は十二分に健康であるほうが望ましい。
そして伊作の近くには、多少の怪我は怪我とも認識しなくなったくらい頑健な学園きっての武闘派がいる。
「食満先輩が使ったら体中の骨が痒くなったっていう試薬は、それじゃ改・一号か」
薬のにおいを嗅いでらしくないほどに怯え、完全に腰が引けて乱太郎から逃げ回っていた留三郎の姿を思い出して三木ヱ門が言うと、今度は怪士丸が「ひえー」と裏返った声を上げた。
「骨なんてどうやっても掻けないのに、痒いんですか」
「だから生き地獄だったとおっしゃていた」
「それは二号です。一号は、調合した薬種を馴染ませるために保管してる間に爆発したんですって」
「なんで!?」
期せずして三木ヱ門と怪士丸の声が揃った。伏木蔵はあっさり「さあ」と受け流す。
黒色火薬をうっかり混ぜ込んだのか、まったく新しいやり方で新種の火薬を作り出してしまったのか。どちらにしても、少し時機がずれていたら、被験者――いや、被害者か――は怪我を治す為の膏薬でさらに大怪我をしたかもしれないということだ。
保健委員長の不運波及力、恐るべし。これはもう一種の兵器だ。
「一号より二号の方が危険度は下がってるから、二号の次の三号はもし副作用があってもそんなにヒドイことにはならないと思います。たぶん」
それにちゃんと新野先生お手製のを使っていたなら何にも問題はないですよと、呑気そうな口調で伏木蔵が言う。
しかし、二者択一なら間違った方へ、「ちゃんと」ではない方へ手を伸ばしてしまうのが保健委員ではないか?
……ちょっと食満先輩に悪いことをしたかもしれない、と思ったが、三木ヱ門は深く考えるのはやめた。
「えーと……ところで、久々知先輩が校舎の方へ走っていらしたのを見ていないか」
そう尋ねると、見ました見ましたと一年生たちが口々に言った。蜘蛛梯子を窓枠に取り付ける時に校舎の外が見えて、そしたら久々知先輩が焔硝蔵の方から凄い速さで走って来ました。
「竹谷先輩とご一緒に」


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