いつか使うかもしれない資料をしまい込んだきり「開かずの部屋」になっている納戸は、校舎の中にいくつかある。
ともあれ、伊作がいそうな場所は絞られた。兵助を探すついでにあちこちの納戸も見て回り、そこで見つからなければ長屋へ戻ってみることにして、三木ヱ門は校舎の廊下をてくてくと歩き始めた。
焔硝蔵からここまで走って来たうちのひとりは、やはり伊作なのか。薬草園で薬草を摘んで焔硝蔵へ置き、しかしただ置くだけはなく何か処置が必要だったので、それを済ませた後に大急ぎで次の場所へ向かった――なにしろ一刻も早く逃げた猿を捕獲しなければならないのだから――のであって、逃げ出したというわけではないのかもしれない。
それはそれで、なぜ兵助も一緒に猛ダッシュしているのか疑問は残るが。
「結局、保健と火薬がつるんでいる疑惑には変わりがない訳か……」
資料部屋のひとつの前を通りすがり、試しに引き戸に手をかけてみる。
鍵はかかっていない。
開けてみようとしたが、押しても引いても不吉な音がするだけで一寸ほども開かない。内側から誰かが押さえているのかと一瞬警戒したものの、気配を伺ってみると、何か重くて大きいものが戸に倒れかかっているようで、この分では戸を無理矢理開けたが最後積み上げられたあれこれが総崩壊を起こすに違いない。
「……て事は、ここは無しだ」
引き戸から手を離してそろそろと後退ると、納戸の中でがらんと何かが崩れた音がしたので、三木ヱ門は慌てて逃げ出した。
そう言えば、黒板の交換なんて大仕事は忍術学園工兵隊たる用具委員に頼めばよさそうなものだけれど、授業の復習とはいえ一年生にやらせるとは日向先生も意外と厳しい。新しい黒板なんて、一体どこにしまってあったんだろう。
「それはですね」
「ぎゃあっ!」