「うわっ!」
思わず声を上げ、踏み出しかけた足を引っ込める。慌てて振り向くと、もうもうと巻き上がる土埃の中に、荷台いっぱいに荷を積み上げた車がガタゴト揺れながら走って行く後ろ姿が見えた。
石を踏んだらしい車が跳ね上がり、危うい所で横転せずに着地すると、既にだいぶ離れたというのに三木ヱ門の足元までドスンと揺れた。車はそのまま益々勢いを増してすっ飛んで行き、瞬く間に見えなくなる。
「……なんだ今の……」
一拍遅れてばらばら降って来た細かい土を浴びつつ、三木ヱ門が呟く。
車を牽いていたのは馬でも牛でもなかった。誰なのかまでは分からないが、一瞬見えた制服の色は一年生と二年生、それに三年生だったようだ。荷は――一抱えほどもある、同じ大きさの箱がいくつも積んであったように見えた。
……中身は何だろう。
「いや、考えるな考えるな」
首を振り、中途半端な位置で止まっていた足を一歩前に出す。ここで暴走荷車の方に首を突っ込んだらまた藪蛇になるに決まっている。好奇心は猫をも殺すというけれど、学園の中を歩いているだけで次々に湧いて出て来る謎に否応なく関わっている今の状況は、藪をつついてもいないのにヤマタノオロチが飛び掛かってきたようなものだ。
天羽々斬はどこにある。一刀両断で問題解決とはいかないものかな。
そんなことを考えつつ歩くうち、やがて校舎にたどり着いた。追っていた足跡はもうどれがどれやら分からなくなっているが、さっきの車の轍は、校舎の前を出発点にはっきりと残っていた。