交互に見やり三木ヱ門が首を傾げていると、何かの気配を感じたのか、すずめが急にパッと飛び立った。そのままひとかたまりになって建物が並ぶ方へ飛び去って行く。
その動きに引かれて、三木ヱ門は立ち上がった。
駆け足の足跡は校舎や長屋がある方角へ向かっている。すずめの導きだ、こっちにしよう。
「行ったり来たりだな」
焔硝蔵から用具倉庫、用具倉庫から寮の長屋、長屋から築山、築山から焔硝蔵、焔硝蔵から次は校舎か?
用のある者以外は通らない場所なのが幸い、あとから踏まれた痕跡もなく、逃げる足跡は土の上に割合はっきり残っている。その跡を慎重に辿りながら自分の行程を思い返し、三木ヱ門はひとりで苦笑した。もしも誰かが一連の行動を観察していたら、さても忙しないと呆れることだろう。
足跡はやがて、北石が喜八郎作のアナンダ二号に落ちていた三叉路に来かかった。北石の救出は成功したようでその場にひと気はなく、タコツボもきれいに埋められていて、足跡はその上を駆け抜けている。
三木ヱ門はちょっと立ち止まり、きょろきょろと辺りを見回した。